小 川 隆 吉 99.10.21
1、私たちアイヌは、この地球上に人間として生まれたことをカムイに伝え
るために、自称をアイヌ(人間)と呼んで今日まで生きてきました。
2、文字と貨幣を必要としない社会で、静かに平和に暮らし、争いが起これ
ばチャランケ(討論)によってすべてを古老中心に解決する社会で、自然の
恵みはコタン(村)に住む人間だけでなく生命あるすべての生き物と分かち
あって暮らしてきました。
3、明治維新の北海道内陸部開拓計画は、アイヌの生活基盤のすべてを奪う
ことから始めたと言ったら言い過ぎでしょうか。道内だけでなく、1875(明
治8)年、樺太・千島交換条約の時にはロシアに対してアイヌの住んでいる
ところはすべて日本帝国のものだと一方的にこの条約をまとめています。
4、その一方で、明治政府の対アイヌ政策の中心は、刑罰中心で、きのこを
取ってはいけない、鮭を取ってはいけない、に始まり野山に入る入会権まで
奪っています。
5、この時期すでに、旧土人共有財産制度に移っていますが、明治32年以
後、北海道長官が内務大臣の許可を受け、共有財産を現地責任者として進め
てきた財産管理は不正、汚職がはびこりました。このような実態を故高倉新
一郎氏は昭和47年発行の「アイヌ政策史」に「管理者の中には往々アイヌ
の無知と自己の地位を利用して、専断の挙に出た者があり、その管理法の妥
当を欠き」と記しています。
6、知事は、一昨年からの度重なる私たちの資料公開請求に対して「原資料
は不存在」と言い、その管理責任のなさとずさんさをいみじくも明らかにし
ました。共有財産の管理経過を一度も知る横会のなかったこの百年、大祖父
母、エカシ(翁)、フチ(おばあさん)にどのような過失、どのような罪があっ
てこのような仕打ちを受けなければならないのか、その説明を北海道知事か
ら受けたいと思います。
7、世界の先住民族の権利宣言案の中には「先住民族は、自己が伝統的に所
有し、又はそれ以外で占有し若しくは利用してきた、並びに自由なかつ情報
を得た上でのその合意なしに、押収され、占有され、使用され又は損害を受
けた土地、領域及び資源の返還に関わる権利を有する」と書かれています。
非人道的手法、行為によって、その民族の生命と財産を奪ったという事実が
判明した時には、時効がない、奪ったものは返す、これが今日の世界の考え、
流れであると思います。
8、1899(明治32)年は、帝国議会で二つの法律が誕生しています。
北海道旧土人保護法と北海道拓殖銀行法ですが、一昨年この二つの法律が運
命を共にしています。拓銀の死亡は道民に深い悲しみと不安を与えたと思い
ますが、北海道旧土人保護法の廃止は多くの道民に深い悲しみも不安も与え
ていません。不平等を保護という名で押しっけ、北海道知事の重大な責任で
ある共有財産管理も不問のまま告別式を終了しようとしていることは断じて
許すことができません。
思いの一端を述べて、私の意見陳述を終わります。