平成一一年(行ウ)第一三号

 北海道旧土人共有財産等返還手続無効確認請求事件

           準 備 書 面(c)

原 告  小  川  隆  吉

                             外二三名

                  被 告  北 海 道 知 事

平成一二年二月一〇日

                原告ら訴訟代理人

 弁護士 村   松   弘   康

               外六名

札幌地方裁判所

 民事第三部合議係御中

  

     

第一、原告らの主張

 原告秋辺得平の請求のうち訴状別紙五記載の官報公告における番

号16の共有財産に係わる請求、原告鹿田川見の請求のうち訴状別紙

十記載の官報公告における番号5及び17の共有財産に係わる請求並

びに原告豊川重雄の請求(以下「本件請求」という)について

 一 「訴えの利益」について

  1. 被告は、本件請求のうち主意的請求に関して、狭義の「訴
  2.  えの利益」がなくすべて不適法であり却下されるべき旨主張

     している。

        しかし、本件訴訟において無効等確認訴訟が適法に提起で

       きることは原告平成一一年一二月二一日付準備書面で既に主

       張した通りであるが、本件請求についても無効等確認訴訟の

       「訴えの利益」が認められる以上、無効等確認訴訟を適法に

       提起できるのであり、被告の主張は失当である。

  3. 行政事件訴訟法第三六条は、「無効等確認の訴えは、当該処
  4.  分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者そ

     の他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上

     の利益を有する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその

     効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによっ

     て目的を達することができないものに限り、提起することが

     できる。」と規定し、本条の要件を充足した場合には訴えの

     利益が認められ、適法な訴訟とされる。

        そして、本件請求との関係では@「処分…の無効等の確認

       を求めるにつき法律上の利益を有する」か、A本件請求が「当

       該処分…の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する

       ことが要求される。

        本件請求は財産を「返還しない処分」に対してより有利な

       財産が「返還されるべき処分」を主張していることにほかな

       らないが、単に返還請求に対する返還決定がなされれば紛争

       が解決するものではないことは明白である。

        すなわち、アイヌ民族に対し従前強制的に管理してきた共

       有財産を返還することは、アイヌ文化振興法附則第三条によ

       って覊束されているのであるから、本件共有物返還手続の無

       効が確認され又は取り消されれば、判決の拘束力(行政事件

       訴訟法第三三条・同法第三八条一項)を介し、知事の公告に

       遡って返還手続をやり直すこととなる。そして、原告らが主

       張している処分の違法事由(返還対象とすべき財産について

       公告されていない、貨幣価値の変動を十分考慮せずに返還額

       を決定している、原告らが返還手続に参加する手続上の権利

       が侵害されている等)に鑑みるならば、返還手続のやり直し

       によって、以前の返還処分よりも原告らに有利な返還処分が

       なされる蓋然性が非常に高いのである。

        このような紛争の実態に鑑みると、共有財産返還処分の無

       効確認こそが本件請求に関する紛争を直截的で適切に解決す

       る争訟形態であるといえ、本件請求は行政事件訴訟法第三六

       条所定の無効確認の訴えの利益を肯認すべき場合にあたる。

  5. なお、「現在の法律関係に関する訴えによって目的を達する
  6.  ことができないもの」(行政事件訴訟法第三六条)について、

     最高裁平成四年九月二二日第三小法廷判決は、「当該処分に

     基づいて生ずる法律関係に関し、処分の無効を前提とする当

     事者訴訟又は民事訴訟によっては、その処分のため被ってい

     る不利益を排除することが出来ない場合はもとより、当該処

     分に起因する紛争を解決するための争訟形態として、当該処

     分の無効を前提とする当事者訴訟又は民事訴訟との比較にお

     いて、当該処分の無効を求める訴えのほうがより直截的で適

     切な争訟形態であるとみるべき場合をも意味すると解するの

     が相当である。」と判示している。

        本件請求は、旧土人保護法下における不当な強制的共有財

       産管理を清算することを目的として行われる共有財産返還処

       分に関するものであること、返還の根拠となるアイヌ文化振

       興法の第一条に「アイヌの人々の民族としての誇りが尊重さ

       れる社会の実現を図り」という目的が掲げられており、本件

       返還処分はその一環として行われるものであって、単なる私

       法上の財産権についての処分とはいえないこと、多数の権利

       者間において相互に連鎖し、関連し合っている共有財産の返

       還処分であること等にかんがみるならば、返還処分の無効を

       前提とする当事者訴訟や民事訴訟は紛争の根本的解決にはな

       らないのであり、当該請求については「当該処分の無効確認

       を求める訴えのほうがより直截的で適切な争訟形態」である

       といえるのである。

        したがって、本件請求も「現在の法律関係に関する訴えに

       よって目的を達することができない」場合に該当する。

  7. 以上、本件請求は訴えの利益を有する適法な訴訟であり、

 却下されるべきものではない。

 二、行政処分性について

  1. 被告は、本件返還手続、特に指定外財産の返還手続につき、
  2.  「そもそも行政処分その他の公権力の行使にはあたらないか

     ら、これに係る訴えは不適法であり、却下されるべきもので

     ある」旨主張している。

        しかしながら、かかる被告の主張が失当であることは原告

       平成一一年一二月二一日付準備書面で既に主張しているとこ

       ろである。

  3. すなわち、かかる被告の主張は、行政処分に該当するか法
  4.  律上一義的に明確でないとしても同種の行政作用の一連の手

     続と比較してその実質的同一性から処分性が認められるとす

     る最高裁昭和六一年二月一三日第二小法廷判決(民集四〇巻

     一号一頁)及び適用されている行為形式など運用状況を総合

     的に考慮して処分性を認める札幌高裁昭和四四年四月一七日

     判決(行裁例集二〇巻四号四五九頁)並びに行政不服申立の

     方法につき教示があることを根拠に行政処分性を認める最高

     裁昭和四五年七月一五日大法廷判決(民集二四巻七号七七一

     頁)に反するものであって失当である。

  5. したがって、本件請求についても行政処分性は肯定でき、

 適法な訴訟であって却下されるべきものではない。

                           以 上

 

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